Vol:004 寺谷 光 ✕ 穴山昴&黒澤継太郎(Gecko&Tokage Parade)
ピアニスト Wataru Sato/Gecko を中心に 2013 年に結成されたインストゥルメンタルバンド。
“新世代のサウンドの追求”をコンセプトに、ジャズ・クラシック・現代音楽を通過した流麗でメロウなピアノと、洗練されたギター、ベース、ドラムが卓越したアンサンブルを生みだす。
穴山昴(Dr) 黒澤継太郎(Gt)
『若手と中堅の狭間で』
Gecko&Tokage Paradeとは
*以下略 穴山昴 = 昴 黒澤継太郎 = 太郎
寺谷 : Gecko&Tokage Paradeがどんなバンドかってところから聞いてもいい?
昴 : 元々はワタルさんがGeckoって名義でソロの活動をしてて、リリースパーティーのイベント名が「Tokage parade」だったのよね。その時のバンドセットの演奏が良かったらしく、バンドセットをソロとは別のプロジェクトとしてやるのも面白いってなったらしくて、イベント名からとってGecko&Tokageparadeってなったらしいよ。実はその時私は参加してなくて、ドラマー脱退後にサポート募集してるってのを聞いてサポートで入ったのよ。
寺谷 : それもう何年くらい前の話?
昴 : えー、6年くらいは経ってると思う。ギターの太郎が入ったのが一昨年だったかな?
寺谷 : 太郎はどういう流れでそこに呼ばれたの?
太郎 : それはゲコチ(ワタルさん)から直接誘われて!元々、シンガーソングライターの水瑛(スヨン)のバックバンドでサポートしてた時にゲコチが見にきて、そこで仲良くなって飲み行ったりとかで。てか光くんもゲコチ家飲み一緒に行ったね。あの時はまだ加入してなくて、あの鍋食ったイベントのちょっと後にギターが抜けるって話を聞いて、1月のワンマンサポート出演の連絡が12月末にきてって感じかな。
寺谷 : 完全にそれ狙ってたんじゃない?(笑)
昴 : ちなみに私がワタルさんと初めて会ったのも土鍋ですき焼きをやるっていう集まりで知り合った(笑)
太郎 : もしかして鍋が、、、
昴 : 奴が鍋やるときは、、、
寺谷 : チームに取り込みたいときだ。。。なんかちょっとやらしいね(笑)
太郎 : うんやらしい(笑)
昴 : 1本目のライブのリハ終わりにメンバーで回転寿司行ったんだけど、徐にワタルさんが「ギター抜けたからアー写取らなきゃね。アー写映る?」って太郎に聞いて、太郎も「映りたい!」って言って
寺谷 : なんかやらしい人じゃない?(笑)
太郎 : そう、やり口はかなりこすい手を使ってくる(笑)
昴 : アー写映るんだったらメンバーじゃない?みたいな。
太郎 : 実質俺はもう2年か。
寺谷 : 太郎はギター弾いてて欲しい人だし、トカゲ入って方向がめちゃくちゃ定まった人って感じ。
昴 : なんかわかるわ。行き先も決めず小舟を一人で必死に漕いでた人っていうか笑 トカゲの船に乗っても同じ仕事するからって感じ。
太郎 : 三人が乗ってるでかい船に小舟繋いでオールで漕いでますね(笑)
寺谷 : なんか想像つかないんだけど、バンド的立ち位置あるじゃん?太郎は何担当なの?
太郎 : 俺が自覚してるのは完全にライブのテンションの火付け役というかトリガーになってる気がしてますね。
昴 : 確かにそうだね。
寺谷 : なるほどね。
太郎 : 後わけわかんない毒放り込むのも俺の役割かな。
昴 : 私がそれをちょっと解毒してみんなが食べれるようにしてるかも。太郎のそういう毒はそのままじゃ取り込めないんだよね。何かが挟まって初めて食べれるというか、私はその中和作業をしてるかもしれない。太郎が入ってよりインスピレーション寄りに演奏するようになったかな。
寺谷 : 確かに今回のアルバム「Re:Tokage」も聴いたけどジャンルすら変わってくる勢いで変化してるよね。一回観にいったライブで聴いたNica’s Dreamあるじゃん?今回のアルバムにも入ってるやつ。あれのアレンジって誰が考えたりするの?
太郎 : あれは昴さんじゃないっすかね?
昴 : その曲に限らずだけど、アレンジは結構私が請負ってるかも。
太郎 : 多分7,8くらいは持ってる気がする
寺谷 : え、太郎はいくつ持ってるの?
太郎 : 、、、、、2
寺谷 : 後二人で1しかないじゃん!(笑)
昴 : 0.5ずつじゃん(笑)
太郎 : そう(笑)
昴 : アレンジと言っても他の楽器の事は明確に言えないから、ニュアンスで伝えて各々が広げるって感じ。Nica’s dreamは作曲者のHorace Silverのテイクのイントロフレーズとか、ドラムソロのバースでやってたユニゾンを違うとこに持ってきたりとかして原曲を参考にしながら進めていったり。ワタルさんがメロディとかテーマを考えてきてピアノだけで弾いて、そしたらテンポ下げてこうしようとか、このリズムでやってみようとか、ベースはステイでどう?みたいな指示で全員がやってくれて形にするというか。
寺谷 : なるほどね。個性を出す選択肢は大いに残されつつも方向性はブレないって感じだね。
太郎 : そうですね。まあ、Nica’s dream苦手なんすけどね。なんか、、、、
寺谷 : かっこよかったけどね。
太郎 : 苦手Dreamだよ。
一同拍手
太郎 : これは書いてください(笑)
寺谷 : なんだよ苦手dreamって(笑) Playwrightレーベルだとどこを意識してるとかあるの?
昴 : ない。
太郎 : 全くそれに関してはないわ。なんかそれぞれがそれぞれっていうのはもちろんなんすけど、俺が掲げてるものはあるっすね。絶対に攻撃力だけでは負けたくないというか。
昴 : なるほどね(笑)
太郎 : ライブで熱量むき出しの演奏する俺らがいる意味が絶対にあると思ってるんですよ。実際音源とライブでかなり熱量が違ってて、ライブだとロックバンド見てるのと一緒かなって思ったりもします。
昴 : そうだね。私、横浜のmotion blueでシンバルグーパンしたもん(笑)
太郎 : キックも壊してますよね(笑)
寺谷 : 何してんの(笑)
太郎 : 俺もモーションブルーで初めてファズを鳴らしたかもしんないっすもん!
寺谷 : それは、、、ないと思う(笑) 誰かは鳴らしてるわ(笑)
三人のジャズとの出会い
寺谷 : 自分のジャズとの出会いを語ると、一番最初は高校で吹奏楽部に入ってトロンボーンをはじめてクラシックにどハマりしたのよ。三年間ずっとクラシックばっかり聴いてた。音楽のことなんて何にも知らない状態から深い海に足を入れていったね。高校は埼玉県で県大会出るくらい一応しっかり実力もあるところだったね。埼玉県って県大会で金賞取ったら全国金賞ってくらい強いところなんだよ。
昴 : 埼玉は強豪いっぱいいるよね。広島から全国出ても関東に全然勝てなくてね。
太郎 : へー、クラシックの演奏一回も見に行ったことない。
昴 : でも聞くよね?
太郎 : 、、、いや、聞かない
寺谷 : なんだよその嘘っぽいやつ(笑)
太郎 : いやわかんないっすもん実際
昴 : ラフマニノフとか聴くじゃん
太郎 : うん。
寺谷 : 聴くじゃん!
太郎 : 2番でしょ?(笑)
昴 : 2番めっちゃ好きじゃん
太郎 : あれはいい。なんかメロウだよね
寺谷、
昴 : (笑)
寺谷 : ラフマニノフとか好きだったら、ドビュッシーとかも好きなんじゃない?
太郎 : あー、ドビュは、
昴 : ドビュ(笑)
寺谷 : ドビュって呼んでんの(笑)
太郎 : ドビュッシーは一番聴く、一番わかりやすいから、なんかポストロック的なんすよね。ポストロックの父って呼んでんすけど俺は
寺谷 : なんかわからなくもないけど(笑)
太郎 : なんすかねー、結局なんか現代音楽よりというか、個人的に聴きやすいんですよ。
寺谷 : なるほどね。 まあ、話戻るけどジャズと出会ったのは大学でジャズ研に入ってからで、クラシックに変わる熱中できるものがビッグバンドだった。それこそCount Basieとかオールドスイングでご機嫌なのがすごい好きだった。ビッグバンドのコンテストに命かけてたって言っても過言でないくらい生活と単位を犠牲にして頑張ってたね(笑) そしてサークルの先輩でもある豆腐さん(Calmera元マネージャー)の影響もあってクラブジャズを大好きになるんだよね。太郎は?
太郎 : 俺ラルクが大好きでギターをはじめたんすよ。それが中三くらいで、高校入って”俺はラルクが好きだ!”って入った軽音楽部の先輩がすごかったんすよ。俺らの時代ってBUMP,ELLEGARDEN,RADWIMPSここら辺りじゃないすか?違うんすよ!My Bloody Valentine、Ride、Chapterhouse、なんでこんなシューゲイザーだらけなんだ!って(笑)
昴 : 太郎のサウンドはそこからなんだね(笑)
太郎 : なんか音圧バコバコの足元グアーみたいな。んでそん中でジャミロクアイかっけえみたいな(笑)
寺谷 : ジャミロクアイは当時だねー(笑)
太郎 : だからバンド全盛期なのにチャットモンチー好きみたいなのは全然いなくて、でもそういう部活だったから90年代の音楽に魅了されるわけっすね俺は。ノイズとかシューゲ、ポストロックとか。あの頃はSigur Ros、Radioheadとか流行ってる時期だったからたくさん聴いてました。
寺谷 : それが完全にバックボーンになってるんだね
太郎 : そのまま専門学校行ったら周りは全然違かったんすよ。 周りはボーカロイドだった(笑)
寺谷 : タイプも何も違う(笑)
太郎 : ジャズなんて全くやってなかったけど、あるきっかけで国立音大のニュータイドを観にいった事があって、ビッグバンドすげえってなったんすよ。
寺谷 : ニュータイドってそんなにスイングしてないよね?
太郎 : そうなんすよ!「ジャズってポストロックじゃん!」って笑 それがすごい聞きやすかったんすよね。
寺谷 : なるほどね笑 コンテンポラリージャズがポストロックとか聴いてる影響で聴きやすかったのね。
太郎 : その後にAntonio Sanchezに出会って、流行りのコンテンポラリージャズとかも聴くようになって、Robert Glasperとかにたどり着いたんすよ。
寺谷 : あー、そうやって繋がっていくわけね。なんか源流からというよりも端から源流に近づいていった感じだね。
太郎 : そうです。だから、bebopなんて弾けないんです(笑)
昴 : まだ出会ってないんだね(笑)
太郎 : ジャズのことは難しいというより性に合わないって理由で避けてたんすよ。音楽はでかい音を出さないと気持ち良くないと思ってたから、まあそれももう変わったんですけど
寺谷 : でも太郎のやってるバンドのsoigneって俺の中ではジャズだけどね。
昴 : 太郎はそういうの吸収がすごいよね。
寺谷 : 確かに。たまに遊びでDonna LeeとかConfirmationやってる際は普通に弾けてるって認識だよ。
太郎 : なんすかねー、なんつーかそういうの弾くのは好きなんすよ。弾くのは好きなんすけど聴くのは、、、、「最高だ!」って聴けないんすよねbebopとか
寺谷 : なるほどね。
太郎 : だからコンテンも冷静にいいなってテンションで聴いてる。
昴 : なるほど。
太郎 : だからいつか俺が最高って思えるジャズミュージシャンに今後出会っていくと思います。
寺谷 : 昴さんのJAZZとの出会いは?
昴 : 遍歴でいうとひかるくんと一緒で高校から吹奏楽部でクラシック。私の場合はそのあと短大で音楽学科行ってそこもクラシックだった。高校の時の先輩でジャズ好きな人がいてそこでbebopだね。
寺谷 : あー、入り口bebop。
昴 : Art Blakey、Max Roachとか
寺谷 : ゴリゴリだ。
昴 : そのジャズ好きな先輩とバンドを組むことになったんだけど、この時はトランペットで(笑)
太郎 : なんかめっちゃ坂道のアポロンだ
昴 : ある日その人がセッションに行きたいって言い出して(笑)
寺谷 : 坂道のアポロンだ
昴 : それで広島の繁華街のセッションバーに行ったんだよね。。今はわからないけど私が広島にいた当時はジャズ研とかもそんなになくてジャズが盛んとは言えない環境だったのもあって、セッションでやる曲はスタンダードジャズ、ホストも白髪のおじいちゃんみたいな(笑)
寺谷 : おじいちゃん(笑)
昴 : もうリアルにbebopの時代を生きてきた人たちばっか笑 ちょうどそこに同郷のピアニストの大林武司さんがいてね。それで大林さんの演奏を観てジャズにどっぷりかな。すごい衝撃的だったのは覚えてる。
寺谷 : へー!
昴 : 技を使えるのに無駄に使わない感じ。でも一撃はすごいというか洗練された演奏に出会ってジャズに浸かっていったかな。
太郎 : いい出会いっすね
昴 : 生きてるミュージシャンで一番尊敬してる。