Vol:006 辻本美博 ✕ 雫(ポルカドットスティングレイ)

Vol:006 辻本美博 ✕ 雫(ポルカドットスティングレイ)

ゲストプロフィール
雫(ポルカドットスティングレイ)
ポルカドットスティングレイのソングライティング、アートワーク、MVのシナリオ等、クリエイティブ全てを手がける。
J-WAVE 81.3FM 「SPARK」火曜日ナビゲーター。
2021年5月26日、2nd E.P.「赤裸々 E.P.」をリリース。

辻本美博がMV撮影や音源レコーディングに参加する中で、演者としても、クリエイターとしても、組織のリーダーとしても、この人すごい!おもしろい!もっとお話を聞かせて欲しい!と強く思ったお相手が、ポルカドットスティングレイのVocal/Guitar 雫さん。Calmeraの15周年という機会に辻本自らインタビューすることができた結果、たくさんの「なるほど~」というお話が聞けた。

辻本: 対談というよりは、雫さんの凄みについて掘り下げられたらいいなと思いまして。

: ヤバイよ~緊張するよ~!

辻本: 僕的にはこのCalmeraの15周年という機会を利用して、雫さんの話を聞きたいなあと。で、事前に質問したいこととか送ろうかなとも思ったのですが、アドリブの方が良いの出してくれそうやなと思って、あえて送りませんでした!(笑)

: あ~良い話できるかな~(笑)がんばろ!

辻本: 演者として、クリエイターとして、組織のリーダーとして、の凄さが、関わらせてもらった中で垣間見えて、いやまじすげえ人やなってなって。

: ほんとですか?

辻本: 正直、関わらせてもらう前は、演者としての姿しか知らなかったんで。

: ああ、まあ、そうですよね。

辻本: なので今日はその3つについて、掘り下げさせてもらえたらなと!

: ありがとうございます!よろしくお願いします!

「根暗すぎて無理」ポルカドットスティングレイ雫が語る、自身を “クリエイティブ” として扱う演者論

辻本: それでは最初に『演者として』の部分なのですが。まず単純に「曲を作って曲を演る」ということにかけてカッコいい!

: ああ、ありがとうございます。

辻本: そして、ステージ上で華がある!

: ああ、ありがとうございます。

辻本: そして、そもそものビジュアルが良い!

: ほんとですか?必死ですよ!(笑)

辻本: いや、そもそもの作りが美しいと思います!

: 良かった!

辻本: 全部を総合して演者としてカッコいいな!って思ってるんですが、「演者として」大事にしている事とか、意識している事があれば教えてもらいたいです!

: 私は、雫という人間として良い演者であろうと努力しているというよりは、クリエイター目線で表に出る時の自分を「クリエイティブ」として扱っているんですよ。だから、この後聞いてくださる「クリエイターとして」に含まれるかもしれないです。

辻本: あ~、なるほどなるほど!演者として、音楽楽しい!とか、ステージに立つの気持ち良い!とかは、根底にはもちろんあると思うんですけど、、、

: もしかしたらあるのかもしれないですね。

辻本: あ~、それぐらいの感じなんですね!もう本当に、クリエイターとしてイチキャラクターを扱っているというか。

: そうです。もうキャラクターです。お客さんの前に出てる時はキャラクターだから、顔の造形ひとつ、髪型ひとつ、振る舞いとかステージの上で喋る事とかも、クリエイティブとして管理してるから、ライブの時も、わ~楽しい!って演るというよりは、この照明の時はこっちを向くとか、表情はこれとか、曲ごとに決めてるんですよ。

辻本: なるほど~。

: ひとりの女性としては、どう見えるかとか、綺麗にしなきゃとかあんまり気にしないタイプなんですけど、もう自分の姿をクリエイティブだと思っているので、そこまでやってます。

辻本: ステージで演ってる時も、めちゃくちゃ冷静で、コントロール下にあって、なんならもうひとりの自分が指示を出してるぐらいのイメージですか?

: もうひとりの自分しかいないかもしれないっていうぐらい、いろんな事を考えながら演ってますね。

辻本: なるほど~。

: だから、ライブの時にむちゃくちゃ歌詞間違えます。

辻本:(笑)

: 意識しなきゃいけない事がたくさんあるんで、たぶん歌詞が一番下の層にあるんですよね。

辻本: あ~、なるほど~。めちゃくちゃおもしろい話ですね~。それで言うとこの後の「クリエイターとして」の話に繋がるんですけど、MV撮影に参加させてもらった時に、あ~、この人めちゃくちゃ客観的に自分のこと見てはるな~と思った瞬間があって。映像チェックの時に、あ~これかわいいね、とか、あ~これはブスだから全然良くない、とかを、別人が見ているかのように、いわばカメラマンみたいに言っていたのがすごく印象的で。

: そうそう。いつもそうなんですよ。

辻本: あの時は映像作品の時はそういう視点でやってるのかな?ぐらいに思っていたのですが。ライブも全部なんですね!

: お客さんの目に触れるタイミング全てですね。だから私はクリエイティブとして見てチェックして、これはブスだからここを改善しようみたいな指示を出しています。でも初めましてのスタッフさんとかから「え~そんな事ないですよ~かわいいですよ~」みたいな事を言われたりして、、、

辻本: そういう事じゃない!っていうね!

: そうそう!それぐらい客観的に見て、クリエイティブを良くしようと意見を言っているだけなので(笑)

辻本: 雫さんのクリエイティブの中の一つとして「演者として立つ雫がいる」ということなんですね!

: そうです。もとの人間のところが出てきちゃうと、、、もう暗くて陰キャなんで。

辻本: (笑)

: ステージに立つのとか無理すぎて。人前とか、ライブとか、考えられないんですよ。だから私自身はすごい離れたところにいて、完全にクリエイティブとして存在していないと無理です。

辻本: なるほどなるほど~。

: 根暗すぎて無理(笑)

辻本: (笑)この話めちゃくちゃおもしろいですね!

: モノを作るのは好きなんですけど。曲とか、グラフィックとか、映像とか「作る」のは大好きなんですけど、最近までライブは苦手でしたね。「ひとりの人間としての雫」が捨てきれてなかったからだと思うんですけど、武道館ライブあたりから、これは完全に切り離して考えないと私が壊れると思って。1万人もこっち見てて恥ずかしい、みたいな(笑)これが今後さらに沢山の人に見られると思うと、自分のメンタルのために完全に切り分けることにしました。

辻本: 「完全に切り分けることにしました(笑)」って感じ、、めちゃくちゃおもしろいですね!!

「私が2年間頑張って結果が出ないってことは向いてない」ゲーム制作ディレクターを経て音楽を作る人になったからこそ貫ける “ニーズに応える至上主義”

辻本: この話を受けて次の「クリエイターとして」の部分をもっと前のめりに聞きたくなったのですが。最近でいうと【新R25】の雫さんの記事を読ませてもらったんですが、もともと好きで読んでいたら、あっ雫さん出てきた!ってなって。

: あれ良い媒体ですよね!

辻本: あれを読んだ後だから、今聞いたお話もすっと入ってくるなと。ニーズに応えることに徹底しているというお話でしたよね。

: そうですね。

辻本: ニーズに応えるという意味で、お客さんはブスの雫を見たいわけじゃないという考え方ですよね。

: そうですね。美しい雫しか見たくないはず。

辻本: そういう考え方が全てに行き渡っている感じが、今のお話や、新R25の記事や、世の中に発信されているモノ全てから伝わってきます。そしてゲーム制作会社におられた時のお話もとてもおもしろくて。あっ、若くしてそんな経験もされたんだなあと。

: 23歳で初ディレクター作品をやりましたね。

辻本: 23歳ってことは大学新卒から考えると2年目ってことですか?

: そうですね。もともと翻訳のアルバイトで入って、次にプランナーを目指して。で、実際にプランナーになって、社員になって、ディレクターになって、みたいな流れを1年でやりましたね。早かった~。私、結構、飽きやすいんで、目標を決めて、1年もしくは2年以内にここに到達できなかったら辞めるとかすぐ言うんですよ。

辻本: 本当にそう思ってですか?

: まじでそう思ってます。

辻本: そういう目標を設定することによって自分を鼓舞する、とかではなく?

: いや、普通に辞めようと思ってですね。私が1、2年も必死に頑張って成就しなかったらそれは向いてないってことかなと。

辻本: なるほど。

: だからポルカもそうなんですよ。1、2年やってみて、私も本気でやるけど、箸にも棒にもかからなかったら、私は辞めてゲームクリエイターとしてのみ活動するねってメンバーには言っていました。

辻本: なるほど。

: メンバーは辞めたくないから、ゆうくんとミツヤスからは、いやいや会社の方を辞めてよ~みたいな(笑)

辻本: (笑)

: それで揉めたりもしたけど、ユニバーサルとの話が出てきたんで、じゃあ会社辞めよって言ってこっちにきましたね!

辻本: 有言実行ですね。2年でデビューされてますよね?

: 2年ですね。2015年結成で、2017年にデビューしてますね。テレキャスター・ストライプが2016年とかですね。

辻本: 私が2年間頑張って結果が出ないってことは向いてないって言い切れるのは、自分に対してストイックであると同時に自分を信じられているってことですよね。

: そうですね。

辻本: でもその自分を信じられるって、相当の努力をしていないと言えないことですよね。

: そうですね~。努力してる。

辻本: そうですよね~。

: (笑)

辻本: じゃないと今こうはなってないやろうな~って。

: 生き急いでるから、私はこれをやる!ってなったら寝なくなりますね。

辻本: なるほど~。もともと睡眠時間は削れるタイプですか?

: そうですね。小さい頃から深夜2:00とかまで起きて、、、

辻本: へ~!

: ゲームしてました!

辻本:(笑)

: 幼稚園の頃からずっと家でゲームをして、周りの大人から怒られてました(笑)「あんたそんなゲームばっかりしてて将来何にもならんよ!」って。でもその時にゲーム作る人になるもん!って言って泣いてました。

辻本: ほんまになった!(笑)

: なのに会社辞めて(笑)

辻本: でも大成功パターンじゃないですか!

: 子供の頃から、一生死ぬまでゲームクリエイターとしてやっていくって思ってたから、今こんなことあるんや~って。ゲーム作らずに音楽作ってるって。

辻本: 音楽はいつから始めたんですか?

: 大学の頃に軽音部に在籍していたことがあって、たまにボーカルだけ遊びでやるみたいな。ギターも含めてちゃんとやり始めたのは21歳ぐらい、ポルカを組んでからですね。

辻本: へ~!そう聞くと、ゲームクリエイターとしての道のりの方が長くて深いんですね!

: もう、命ですね。私のすべてみたいなもんだったから。だから作ってて思うのが、ゲームはもう好きだし命だし私のすべてだから、私が面白いって思うこととプロデューサーやクライアントとの意見が違ったときも、絶対私が考えたやつの方が面白いです!!って感じだったんですけど。誤解を恐れずに言うと、音楽に関しては、私はこれが向いているから仕事でやっている、お客さんが喜んでくれるから仕事でやっているものだから、クライアントにこうしてくださいって言われたら、やりますやります!歌詞も全然変えます!ってなります。

辻本: なるほど~。まさにニーズに応える至上主義!

: そうですそうです。ゲームは1番好きなものだからちょっと負けたくないみたいなところが出てきちゃうけど、音楽はそれが出ないから良いですね!

辻本: (笑)

辻本: ちなみに、なんですが今ってもうゲームを作る方は一切やってない感じですか?

: たまに単発でブラウザゲーム作ったりはしますね。

辻本: へ~~!!

: 福岡での会社員時代に相棒だった人と2人1組で作ったりして、リリースのタイミングに合わせて無料のゲームを出したりとか。

辻本: へ~~!!すげー!!

: やる度に、あ~ゲーム作るの好き~ってなってますね!

辻本: 2番目に好きなことを仕事にした方が良い説ってあるじゃないですか?

: その説ある!

辻本: まさにの感じですね!向いているしそれが人に喜んでもらえるから音楽が仕事になってるけど、本当に骨の髄まで好きなのはゲームで。その結果、ゲームの方は良い意味で趣味的にできていると言うか。

: そうですね~。ゴリゴリにゲームクリエイターとしてやっていた頃よりは子供の気持ちを持ってやれてるかもですね。仕事でゲームを作っていた時は、本気で突き詰めすぎて身体と心が持たないぐらい気合い入っちゃってたから。

辻本: (笑)

: 好きすぎてね。(笑)

辻本: じゃあ今は結果的に良いバランスなんですね!

: 結果的に良いバランスなんですけど、ゲームに関してはすごい知識がある自信があるしゲームを作ることにかけては自分のことを天才だと思ってるんですけど、音楽に関してはそんなに知識もないし、あんまり才能があるとも思っていないから、今良い感じに活動できてるけど、これ、いつまで続けられるかなみたいなドキドキは少しありますね。

辻本: へ~。今のお話から僕的には次のテーマに綺麗につながっていくんですけど、、、