Vol:002 宮本敦 ✕ 三浦太郎(フレンズ,Taro Miura)
僕らの時代のものがまた来てる
敦 : 今ってDTM基準で音楽を作っていたりが多いから、エフェクターを並べたりする発想って減ってきてたりするのかなって思うんやけど、そういう今のシーンはどんな感じで見てる?
太郎 : 合理的ですよね。今の音楽に対して必要なものでやってるから、アンプもおかなくていいし、エフェクターも並べなくてもいい。一番ミニマムな形でやっていてそれは理想でもあるんですけど。でもアンプの音を浴びながらギターを弾くのが楽しいっていうのが元々のギター人生の始まりだから、街のスタジオのマーシャルにシールド突っ込んで歪みどこまであげたらいいのかなって考えながらやってたのが始まりで。パソコンで音を作ってやるのはもちろん僕もやってますけど、自分のやりたいことは生の音を感じてやってたいですよね。
敦 : もともと、ギターだったり歌だったりをやろうと思っていたきっかけは?
太郎 : きっかけは、高校生の時にクラスメイトで文化祭でやろうというのが始まりだったんです。一年の時にクラスメイトとのバンドもやるんですけど…ハードロック狂いみたいな人がいるじゃないですか?
敦 : 絶対学校に一人はいるね。(笑)
太郎 : うちの高校だと、安藤君っていう子と柳原君っていう二大巨塔がいて。柳原くんは家にスタジオがあってドラムも叩けるし、ギターも弾ける。Eric Claptonみたいな感じで。安藤くんはLed ZeppelinとかDeep Purpleとかが好きで、速弾き上等のタイプ。そんな二人と一緒にバンドやることになって 。
敦 : 荷が重い!(笑)
太郎 : で、そこでボーカルスタートだったんですけど、 Deep PurpleとかEric Claptonとか、Led Zeppelin、Extremeとか、本当いろんなバンドのコピバンを文化祭でやって、「すごいね、あんなに高音出て!」とかすごくみんなに褒められたのがはじまりです。で、もうひとつの同級生のバンドでオリジナル曲をやるってなって、同時にコピーバンドとオリジナルバンドやってたんです。その時に、こっちで培った高音をこっちでも出したいし、逆にあっちで培ったオリジナリティをこっちでも出したいってなって。そんな事やってる自分って、すごいんじゃないかって思ってる時期があって。
敦 : たしかに、自惚れないと前に進めない時だからね。
太郎 : そうそう、当時は!(笑)
敦 : 僕も、先輩がハードロック狂いでライブ見に来いよって言われて。町の公民館。ライブハウスないから。(笑)田舎でハードロックもろくに知らないながら、先輩を見て「かっこいい、これはなんていうバンドですか?」って教えてもらってCD買ってハードロック狂いになりつつ。その時にHi-STANDARDとか流行って、友達から教えてもらったりでいろんな音楽に興味を持っていくことになるんやけど。でも、WEEZERとかあのシーンってハードロックとはかけ離れてるでしょ?太郎君はなんでそっちのシーンに寄ったの?
太郎 : ハードロック狂いの人達って、独特のグループじゃないですか?
敦 : そうね。(笑)
太郎 : もうちょっとお洒落なの聴いてる風に見られたいなって思ったんですけど、当時CD屋さんにすごい通ってて。そのCD屋さんが全部視聴できるようにしてくれてたんです。
敦 : それは最高。
太郎 : MTVとかスペシャ(スペースシャワーTV)とかで気になった曲をメモってCD屋で聴いて。その中でもWeezerはヘンテコでかっこいい。これだったらクラスで人気者なれる気がして。マウント取れるみたいな。(笑)
敦 : わかるわかる。
太郎 : CDジャケットもPVもお洒落に見えて聴いてる俺すごいだろっていうのが最初にあって。で、とりあえずWeezerのCDを全部揃えようってところからどんどん好きなっていったんです。あの頃ってハードロック狂い、メロコア、お洒落なものみたいなジャンルに分かれていて。
敦 : お洒落系って、いわゆる渋谷系の流れがあるタイプのね。
太郎 : そうそう、Tahiti80とかめちゃめちゃ流行って。僕は野球部だったんですけど、ウォームアップ中に流す曲がハイスタからTahiti80になって。(笑)
敦 : おしゃれなウォームアップ。(笑)
太郎 : その時はおしゃれな音楽知ってることが大事だったんです。
敦 : 僕も同じ、よくわかる。(笑) でもそういう色んなジャンルを聴いてたことが、今の音楽性にあらわれてるのかなって。今って、特に90年代~00年代のサウンドがまた注目されてて、僕らの世代の音楽が重要になってくると思っていて。
太郎 : ですよね。今、二十代とか十代後半の子達が、ガレージパンクやったり、パワーポップやったりしてるのを聞くと、俺らの時代のものがまたきてるんだなって思って応援したくなるし、自分もそういうのやりたくなる。
敦 : またFranz Ferdinandみたいなバンドサウンドが盛り上がってきて欲しいなって。
太郎 : うんうん。
敦 : みんな家の時間が延びて、家で聴くグッドミュージックが盛り上がって来てるけど、このコロナ禍が落ち着いて、気持ちよくライブできますってなった時に、単純にはしゃぎたいとか汗かきたいって気持ちが盛り上がってくるのかもなって。お客さんも演奏者も。
太郎 : そうかもですね。
今後の音楽と根っこにある音楽
敦 : 太郎君は、今後の音楽シーンの予測はあったりする?
太郎 : やっぱり今は、おうち時間がすごく長くて音楽の消費がすごく激しくて、どんどん新しいものが出てきてますよね。それに共通してるのが、チル要素が強いってことなんですよね。耳馴染みじゃないところのギターの音色で言うとファズみたいな個性的な音なんだけど、それがチルに入っていて耳馴染みよく聴かせる感じ。なんというか…CHILL WAVE?
敦 : 確かに、Lo-Fi Hip-Hopが流行ってたり耳馴染みは良いけど、その中に変わった音が入っていたりするのはNew Waveの要素なのかも。
太郎 : 今すごく新譜を聴いてて。特に海外の音楽がすごく好きなんですけど。Gird in redとか…そう、AGEっていう日本のバンドがめちゃめちゃカッコ良くて。「AGE 銀河」って検索したら出てくるんですけど。あと、Cory Wongってギタリストとか。Vulfpeckの。
敦 : 予測の話、海外の音楽シーンの流れってなんとなく理解できるけど…
太郎 : そうなんですよ、日本の音楽シーンってやっぱり独特な気がして。予想だにしなかったところからヒットしたりするから、tiktokとか動画サイトでバズるっていう要素がとても重要で。
敦 : それは曲を作る上でバズる要素を考えたりするの?
太郎 : いやぁ、できないですよねぇ…(笑) フレンズの中でやったら良さそうっていうテーマは、自分の中で持とうとは思ってるんですけどね。それをいろんなところから取り入れようと、いろんな音楽聴いてるんですけどね。
敦 : 今後、フレンズはこう変わっていくだろうなっていうイメージはあったりする?
太郎 : 今四人になって、何を大事にしてるかって考えたら、メロディーだったり歌詞の雰囲気だったりしてるんで、今までは曲調をすごく大事にしてたなと思うんですけど、もっと芯に寄っていってる気がしてます。メロディーを突き詰めたりだとか、メロディーに合わせた歌詞の曲を作っているメンバーが多いんじゃないかと思います。僕自身がそうなので。僕はメロディーを考えるのが好きだから、フレンズでこういうメロディー歌ったらおもしろいんじゃないかとか、これはちょっと違うかなとか考えるのが楽しいから、今後はもっとグッドメロディーになっていくんじゃないかなと思っているんですけどね。
敦 : 逆に、ソロのTaro Miuraとしてはどうしていこうと思ってる?
太郎 : あー、なんでしょうね。(笑)音源出したりとかやっていきたいのもあるけど、今はフレンズであることの重要性がありますね。でも、ずっとやりたいこととしてはAORやりたいですね。“TARO”ってAORの字が入ってるから。
敦 : なるほどね。
太郎 : “TAOR”みたいな感じでやりたいんですよね。実はデモ曲とかも作っていて。でもそれは”ドAOR”をフレンズではないなっていうのが自分の中にあるんで。好きなAORがChristopher CrossとかThe Doobie Brothersとかで。
敦 : 80年代よりも前の臭い頃のAORだ。(笑)
太郎 : そう、Daryl Hall & John Oatesとか。そういうのはソロでやってみたいなと。うちの父親が、音楽好きで影響を受けていてBee GeesとBurt Bacharachのレコードを幼少期に聴かされていて、その頃にグッドメロディーを聴いて育ったので。
敦 : 僕、バカラックは憧れる作曲家の一番くらいにあがる。(笑)
太郎 : えー!いやぁ、すごいですよね。
敦 : バカラックて、初めて聴いたらちょっとヘンテコなメロディーに聞こえるけど、それがなぜだかポップで。
太郎 : そうなんですよ、ポップにしっかりパッケージングされてて。
敦 : 聴けば聴くほどポップさが出てくるという不思議なメロディー感がある。
太郎 : 僕の人生の中で一番好きな曲がこれで♪(鼻歌でI’ll Never Fall In Love Again)ちっちゃい頃に「わっとぅゆげっとぅゆ」って歌ってたの覚えてて。コード進行も変わってますよね。
敦 : そうそう、コードの流れは王道じゃないのに、メロディーをのせたら王道でポップに聴こえるという。
太郎 : うんうん
敦 : それがThe Beatlesにもあって。
太郎 : あー。
敦 : ビートルズも譜面に書くと、4小節ごとのキリのいいものじゃなかったり、拍子が変わって複雑な展開だったりするのに、作品としてはポップな仕上がりになってる。
太郎 : そういうアーティスト聴き直したら、ぼく、パソコンで曲作ってるなぁと。4小節8小節でとりあえず組んでるつもりなんですけど、それで落ち着いちゃって。偉大な人たちと比べたら”くだらねぇな”って思っちゃう。(笑)
敦 : あの人たちはメロディーからつくっているのかな?
太郎 : 頭の中で作っている出来上がってる感じですよね。突き詰めたいですよね。そこは。
敦 : それは、Taro Miuraで聴けるのか、フレンズの方で発揮されるのか。
太郎 : いやぁ、どうだろう。(笑)やっぱ降りてきたタイミングですよね。降りてきて~ 降りてきて~
敦 : (笑)
これからの作品の話
敦 : 曲の話もしたので、次の作品について訊いても良い?
太郎 : 今、放送中の「ホリミヤ」ってアニメがあって。
敦 : はい、みてます。 作業しながら見てたらエンディングテーマが気になって、チェックしたらフレンズだった。(笑)
太郎 : 僕も見てるんですけど、clubhouseで中継しようかなってくらいドキドキする。毎週。
敦 : あの手の恋愛モノは大人になっても甘酸っぱい気持ちを取り戻せる魅力があるね。(笑)
太郎 : うらやましいとか、こんな気持ちだったなぁとか思いながら見てるんですけど。そのエンディング曲のCDが3/17にリリースします。しかも、それがアニメのジャケットで。前回はハクション大魔王のエンディング「あくびをすれば」の時は、アニメver.とフレンズver.の2パターンあったんですけど、今回はブックレットの中もアニメの世界にどっぷり浸かってるCDで。
敦 : へぇ!うらやましい!
太郎 : そういうのフレンズのエゴがほとんど入ってなくて嬉しいんですよね。向こうがフレンズのことを思って描いてくれているもので、それがすごく嬉しくて。だからアニメファンも必見の内容です。ホリミヤのヒロイン堀さんが歌ってるバージョンが入っていて。
敦 : それはエンディングでは聴けないってこと?
太郎 : そう、聴けないんですよ。僕は先に聴いたんですけど……グッときます。アニメ見てたら尚更。(YouTubeでは期間限定公開中)
敦 : いいなぁ。僕らもそういうアイデアいっぱい盗ませてもらおう。(笑)
太郎 : (笑)
敦 : そういえば、今もまたレコーディングに入ってるんよね?新しい作品を作ってる感じ?
太郎 : そう、作ってます。今年中にはアルバムも作れたらと思って作曲中です。
敦 : でも、ストックがいっぱいありますもんね?
太郎 : そうなんですけど、新しいものを書くとそっちの方がいいって思うじゃないですか。(笑)
敦 : わかる
太郎 : 自分達のエゴもどんどん変わっていくから、どんな作品になるのかはまだわからないです。(笑)
敦 : うんうん、楽しみにしてます。じゃあ、最後に今回はCalmeraの15年周年の対談企画ということなので、僕らにメッセージをもらっても良いですか?
太郎 : 15周年おめでとうございます。15年間、バンドとしての魅力を磨き続けること、とても尊敬しています!今度はイベントではなくがっつり対バンさせてください!
敦 : なんだか照れ臭い。(笑)ありがとうございます。こちらこそ是非とも対バンさせてください!というわけで、フレンズの三浦太郎君、たくさん喋ってくれてありがとうございました!
太郎 : ありがとうございました!
冒頭に書いたように数年ほど、太郎君とゆっくり喋る機会を逃し続けていました。
ちょうど1年前だったか、太郎君がTaro Miuraとしてソロでゲスト参加していたライブを観に行った時にやっと”飲み行こうね”と話した気がします。そしたらコロナ禍、深い友人でさえ飲みに誘いにくい世の中になり、太郎君を誘えぬまま一年経ってしまいました。 僕はもう、気になる女子をうまく誘えないまま言い訳ばかりを並べているダメ男のようでなさけなく。そんなダメな男が、15周年対談の企画を利用してやっとゆっくり喋る機会ができました。快く承諾をもらい、さらにインタビュー場所としておうちにまでお邪魔させてもらい、ほんとに優しくしてもらって感謝しかありません。
飲みにいっても中々話さないような音楽性やバンドマインドについてたくさん話してもらいました。同世代だからか、音楽を始めるきっかけはなんとなく似ているけど、今のアウトプットするジャンルはそれぞれ違う。だから共感や刺激がたくさんあって、終始楽しいかったです。次はライブの打ち上げで乾杯しながら、記事にならないようなくだらない話をいっぱい出来たらなと、あとがきで再びラブコールをして終わりにします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。