Vol:007 PAKshin ✕ 芹澤 “REMI” 優真(SPECIAL OTHERS)

初めまして。SPECIAL OTHERSです。名前だけでも覚えて帰っていってください。

PAKshin : 少し一つ目の質問と被るところがあるんですが、続いての質問は『今まででスベッた(うまく行かなかった)ライブってありますか?』って事なんですが、できれば『うわ〜あの日のライブは全然で今でも思い出すわ〜』みたいな。

芹澤:  スベるにも色々あるからな〜。

PAKshin : どんな方向でも大丈夫です!!

芹澤: 基本的にはスベッたライブでも美味しいと思ってて。ライブの動員2,30人ぐらいの、俺たちがまだ全然な時期に、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のアリーナツアーのオープニングアクトに選ばれて。一気に5万人の前でライブするっていうのがあったのね。急に5万人(笑)

PAKshin : すご(笑)

芹澤: もうほんと、アジカンには頭上がんない(笑) でも、その場って俺らのこと知ってる人なんてほぼほぼいないし、オープニングアクトなのもあって、みんなアジカンを待ってるんだよね。だから、その場はスベってるんだよ。空気というか、観客は誰も俺らのこと望んでない訳だから。でも、それが良いんだよね。そういう意味では、スベってる空気のところでこそライブがしたい。俺たちのこと全然知らない人たちの前で演奏したいってずっと思ってる。

PAKshin : 確かに、ほぼほぼ知らない人の前で「誰だよこいつら」っていう空気感の中でやるのってしんどさもあるけど、新しく自分達のことを好きになってくれる人を増やすチャンスですもんね。

芹澤: 自分達の曲を熟知してて、合いの手の入れ方なんかも完璧にわかってくれてるような人たちばかりの中でやるライブも楽しいし、そんな中でやるワンマンライブの高揚感とかは凄く気持ち良いんだけど、俺たちのことを全く知らない人たちが沢山いる中でやるライブは、それはそれで凄く刺激的なんだよね。

PAKshin : めちゃくちゃ分かりますし、個人的にはそういう精神を持ち続けてらっしゃることに驚きもあって。ちょっと嬉しいなと思いました(笑)

芹澤: あるよー!!全然ある!!「初めまして。SPECIAL OTHERSです。名前だけでも覚えて帰っていってください。」ってずっと言い続けていきたいもん。

PAKshin : すげぇ。でも大事なことですよね。僕たちも、いわゆるアウェイな空気の中でのライブはかなりやって来た方だと思ってるんですよ。各地の地元のお祭りや食フェスとか、音楽がメインじゃないような場所でもかなりライブをして来ていて。その積み重ねで度胸も付いたし、その場にいる人達の心の掴み方も肌で感じて学べてきたと思います。でも、芹澤さんのその想いっていうのはメンバーの皆さんも共通の想いってことですよね?長年、意識をずっと共通して持ち続けているっていうのはやっぱり凄いことですよね。

芹澤: そうだね。みんな同じ想いだと思う。

根源的なことを大事にしていくことが一番大切

PAKshin : ズバリなんですが、バンドを円滑に長く続けていく秘訣って何だと思いますか?

芹澤: えー、何だろうね。

PAKshin : …………??

芹澤: あんまり先のこと考えないってことじゃないかな。

PAKshin : ほう。

芹澤: 何にも考えてなかったんだよ(笑)

PAKshin : (笑)

芹澤: ほんとに先のことなんてあんまり考えてこなかったんだよね。何故か週2回スタジオ入って音楽やって。楽しい!人生楽しい!!って。

PAKshin : でも、さすがに今は音源のリリースの時期や、それに伴ってツアーのスケジュールとか、年間のスケジュールぐらいは計画されますよね?

芹澤: それはするね。でも「冬に北の方行くとご飯食べに行くとき寒いから、できれば暖かい時期にしたい。」とかは話したりしてる。

PAKshin : めちゃくちゃ良いっ(笑)

芹澤: 寒いとちょっと離れたラーメン屋とか行きたくなくなるじゃん。

PAKshin : 確かに。

芹澤: これってお客さんにとってもそうじゃないかと思うんだよね。寒いと並ぶのも辛いじゃん。そういうのって結構大事なんじゃないかと思って。

PAKshin : それは本当にそうですね。「独特な観点で面白いなー!」と一瞬思いましたけど、これは本当に納得です。

芹澤: 割と原始的なことに重きを置いてるんだよね。寒いと嫌だし、お腹が空いてない方が良い。「音楽とは」「芸術とは」を論じるみたいに、崇高な理想を語るのもそれはそれで素晴らしいんだけど、もっと根本のところを大事にしているかな。寒いと指が動きにくくなるから演奏しにくいからやめよう、とか。これってかなり大事なことだと思うんだよね。

PAKshin : 朝が早すぎると身体が起ききらないから良くない。とか。

芹澤: それはどうしようも無い時もあるけどね(笑) 俺は率先して前日に前ノリとかするかな。

PAKshin : 良いですね。僕たちは人数が多くて、基本は集団行動だし、移動も車が多かったりするので。

芹澤: そしたら、俺だったらいかに車の中を快適に過ごせるかを全力で考えるかなー。体力を温存できれば、その分時間が使えるじゃん。時間って本当に大切で、これだけは後から何ともならないものだからね。時間を大切にしていけば絶対に音楽に繋がるから。

PAKshin : うんうん。時間が大切っていうのは年を追うごとに痛感します。それにしても、芹澤さんのおっしゃってることはずっと一貫していますよね。自分の大切にしているものがハッキリしているというか。

芹澤: そうだね。高校の頃くらいからずっとこんな感じだからね。自分じゃない自分に無理やりなろうとするのが嫌いなんだよね。大人数のパーティーでみんなの中心に行って「今から一発ギャグやりまーす!」って言っても絶対スベるし、俺そういうのやるタイプじゃないのよね。でも、それを他のことに置き換えると、やってたりするんだよね。たまに。だから、そういうことが無いように本当に気をつけているかな。

PAKshin : わーーーーー!!あるーーー!!あります!その絶対スベるやつめっちゃくちゃ心当たりあります(笑)

芹澤: 俺は鍵盤を始めたのも、ドレミファソラシドを覚えたのも二十歳だからさ。他に色々な鍵盤奏者がいる中で、能力や技術で勝てるわけがなくて。その中でどう自分を出すかって考えたときに、Rage Against the Machineのギタリスト、トム・モレロの音がめちゃくちゃカッコ良くて好きだから、「俺はこの音を鍵盤で出したい!」と思って。そこからエフェクターいっぱい繋いだり、音作りに没頭して行ったね。自分の思ってる音を出せて表現できたときに、鍵盤だから他の鍵盤奏者に影響を受ける必要って別に無いんだなって思ったね。

PAKshin : かっこいい・・・僕からしても芹澤さんは鍵盤奏者としては特別な人だと思っています。実は昔、レコーディングでご縁あって芹澤さんのレズリースピーカー(※主にオルガンの音を出すアンプ)をお借りしたことがあって。先日はRhodes(※ヴィンテージのエレクトリックピアノ)を自宅に導入したときに、その音作りの仕方のアドバイスをもらいましたし、その時に改めて「この人、マジですげぇ」って思いました。だって、僕の質問に対して、凄く丁寧に何パターンも詳しく提案してくださって。それがめちゃくちゃ研究され尽くしてる内容で。

芹澤: 音作りの研究は今でもめちゃくちゃ楽しい!!何時間でもできるし、アンプもエフェクターもかなりの数試してるからね。ツアー中でも良い音見つけたらすぐにセッティング変えちゃうもん。 

PAKshin : スタッフ泣かせ!(笑) 鍵盤奏者って割と楽器をどう弾くかってことに重きを置いてる人が多いですけど、やっぱり音作りもかなり重要ですよね。その中では芹澤さんに及ぶ人ってなかなか居て無いんじゃないかなと思います。話は変わりますが、チェコでMVを撮ってらしたじゃないですか。凄く良いなぁと思って。

芹澤: うん。

PAKshin : あれはどういう経緯だったんですか?

芹澤: 遊びだよ。ほんと遊びで、観光メイン。何だったら撮影も遊びの一貫だからね。

PAKshin : わーブレへんわぁ(笑)

芹澤: もちろん同じ予算で、日本で良いスタジオと良い機材で撮影したらカッコイイものは撮れるんだけど、海外の風景が映った方が観る人もワクワクするんじゃないかな?と思って。ちょっとでも観光気分を味わってもらえたらと。

PAKshin : 何でチェコを選んだんですか?

芹澤: いやー俺らはさ、暖かいとこが良かったのよ。南国で遊びたかったの。でも蓋開けたら監督が「プラハで撮りましょう」って。寒いから行きたくねぇなーって始めは思ってたんだけどね。

PAKshin : マジでブレてないっすね(笑) 何日くらい滞在したんですか?

芹澤: 6日間

PAKshin : しっかり海外旅行(笑)

芹澤: そう、しっかり海外旅行(笑) めちゃくちゃ楽しかったなー。

PAKshin : 良いなぁぁ!MVのお話してもらいましたけど、ライブで言うと海外はどうですか?反響良いですよね?

芹澤: 良いね。韓国とか盛り上がったし、最近はアメリカでも聞いてくれる人が増えてきてくれてるし。

PAKshin : コロナが落ち着いたらまたアメリカでツアーとか行きたいですか?

芹澤: アメリカはめちゃくちゃ行きたいね。アメリカ良いよ、ほんと。ストリートをやって凄くわかったけど、音楽に対してリスペクトがかなりあるんだよね。楽器準備してるだけでチップ入れてくれたり、俺たちのことを知ってる、知ってない関係なく、楽しんでくれるんだよ。

PAKshin : よく聞くけどやっぱりそうなんですね。そういう話を直接聞くと行きたい気持ちが強くなります!!

芹澤: ビジネスとしてどうするかってなると難しいかもしれないけど、現地の人を楽しませることは全然できると思う。

PAKshin : 最後になるんですけど、15周年を迎えることになったCalmeraに何か一言お願いしても良いでしょうか?急に?って感じですけど(笑)

芹澤: この先、20年経っても同じように音楽を続けて、こうやって喋れたら良いね。お互い健康に気をつけましょう!

PAKshin : ありがとうございます!!! いつか対バンできれば嬉しいです。

芹澤: そうだね、まだしたこと無いもんね。

PAKshin : 僕たちもまだまだ頑張るので機会あれば是非よろしくお願いします!

芹澤: 是非ぜひ!

PAKshin : それとは別に、鍵盤会もやりましょう。鍵盤奏者は自由な変人が多くてあんまり群れないですけど、頑張って声かけます(笑)

芹澤: ほんと変わり者ばっかりだもんね(笑) それも是非やろうね!

PAKshin : 今日は本当にありがとうございました!!

インタビュー後記
本能的、根源的なところを大事にしている芹澤さんのお話は、かなり納得できて、聞いていて楽しかったです。
自分たちが楽しいと思えることをやるし、これは自分じゃないと思うことはできるだけしない。
でも、それは観る人のこともちゃんと考えられているし、インタビューを通して、自分の中で新たな視点が産まれた気がしました。
この日、芹澤さんとはインタビュー後も色々と盛り上がったので、また近々ゆっくりお話がしたいなと思いました。